敵も多いが味方も多い—。だけど、味方は圧倒的なシンパばかりなんだそうです

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『半沢直樹 アルルカンと道化師』で気になった部分になります:

「買収拒否は仙波工藝社の意向に従っただけです。買収を成立させようとして、融資を渋ったりする本部のやり方の方がよっぽど問題じゃないですか」

「組織の論理ってやつだ」

南田がいった。「今回、本部のゴリ押しには目に余るものがあった。だが、連中には頭取方針という錦の御旗がある。浅野支店長もその尻馬に乗った形だ。唯一、取引先のために体を張った半沢課長だけが、組織の方針に逆らったという烙印を押される可能性がある」

「であれば、オレだって同罪です」

中西はいった。「課長は黙ってそれを受け入れるんですか」

「さあな」

南田が浮かべている憂愁は、サラリーマン独特のものであった。

「ただ、心配するな。お前にはなんのお咎めもない」

「どうしてですか」

問うた中西に、

「半沢課長は、ぜったいにお前のことは守るからだ。それだけはオレが保証する。組織の歪んだ論理のため、部下を傷つけたりは絶対にしない。あの人はそういう人だ」

「敵も多いが味方も多い—。半沢課長のことを本部にいる奴がそう言ってました」

本多が言った。「だけど、味方は圧倒的なシンパばかりなんだそうです」

「汚い手を使って買収をゴリ押ししようとした連中にはなんのお咎めもない。こんなことが許されるんですか。オレは納得いきません」

中西は、憤然として南田を睨みつけている。

「オレだって納得いかないよ。だが、我々はサラリーマンだ。お前もこういう経験を通して、身の振り方を学んでいくことになると思う」

部下たちに対して、それが南田が言える全てのことであった。

「絶対絶命の窮地で、半沢課長がどうするか、お前らはその目でしっかりと見ておけ」