専門家のあり方

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「専門家っぽい人」人は、「心不全」という、治療可能な、目につきやすいものに注目する。 輸液は心不全という状態に最適化したものを選択するし、それは外から見ても分かりやすくて、 「専門的」に見える。

本当の専門家は、患者さんが抱える問題を、「人間に手が出せるもの」と、「人の手が届かないもの」とに切り分ける。

あとからでも救済可能な問題は後回しにして、まずは人の手が届かない問題を回避することに全力を挙げる。 「人の手が届かない問題」は、たいてい目に見えないし、そこを目標にした治療というのは、 もっと目につきやすい、「手の出せる問題」には、むしろ悪いことをしているように見える。

専門家はだから、しばしば「専門家なのに分ってないな」なんて思われる。

誰にでも治療可能な、目につきやすい問題というのは分かりやすくて、トレードオフが存在しないから、 専門家っぽい人達は、「今までよりもっと厳密」なやり方を示すことでしか、自らの専門性を 誇示できない。

専門家のジレンマ – レジデント初期研修用資料

「見えるもの」を無限に細かく、厳密に指定する「専門家」のありかたは分かりやすいけれど、 問題の重要度を切り分けて、「優先すべきはこの問題なんだよ」だとか、「ここはいいかげんでもいいんだよ」だとか、 厳密でないこと、細かく考える必要がない部分を教えてくれる専門家のありかたは、 なんだか「手抜き」を教えるみたいで、受けが悪いし、伝えるのが難しい。

専門家のジレンマ – レジデント初期研修用資料